モテと暴力と弱者男性
この記事はセンシティブな記事です。心臓の弱い方、センシティブな記事への耐性が無い方、残酷な話を見ると感情が高ぶってしまう方は注意して読むか、もしくはそっとこの場を離れてください。
「暴力を振るう人間はモテる」
この言説は、いつもどこかで語られ続けている様な古びたロジックである
この言説は、ある意味では正しくて、そしてある意味では間違っている。正確に言うなら、かなりの部分で間違っているので、間違っていると言った方がよい
ところで、
- なぜこうした言説が語られるのか
- なぜ同意を呼ぶのか
- どういう理屈でこの論理が成り立っていて、どういう理屈で反論されるのか
この辺りに触れていきたいと思う
何故こうした言説が語られるのかといえば、これは弱者男性の救済が含まれる論理だからである。その心理をざっくり予想してみると、
「犯罪者は弱者のなれ果てである」
「我々弱者男性と近いはずである」
「にもかかわらず、我々弱者コミュニティには未婚があふれているのに、彼ら性犯罪者は半分程度が婚姻の経験がある。これは、我々の様な生涯童貞を貫く同士と比べて、恵まれているじゃないか!」
「奴らは犯罪というズルをする事で、加害しながら承認を受けているのだ。我々が自宅でコソコソと悲しく自慰をするのとは対照的だ。奴らはズルをすることでモテた悪いやつであり、我々はズルをしないからモテない道徳的な人間なのだ!」
極論ありますが、多かれ少なかれこれが内心に潜む闇ではないかと思います。
わかり手先生こと小山氏の言説をここに備忘録として貼っておきます。
「モテと暴力性」について個人的に最も衝撃的だったデータは性犯罪者の婚姻状況をまとめた犯罪白書の統計資料ですね。性犯罪者ですら結婚してるというのにおまえらときたら…。 pic.twitter.com/9N9CsIQava
— 小山晃弘 (@wakari_te) September 9, 2019
ワーキングプアの婚姻率、精神障害者の婚姻率より性犯罪者の婚姻率のが高いっぽいわけでね…。勿論ほんとにこのテーマについて掘り下げようとしたらより詳細なリサーチが必要ですが、仮説を補強する傍証程度にはなるのではないかと思います。 pic.twitter.com/0CsyJFQHEz
— 小山晃弘 (@wakari_te) September 9, 2019
ツイート内の画像をここに貼りました。主張を抜き出しましょう
まず、婚姻状況を見ます。
どの様な犯罪を犯したのかによってそれぞれでまとめられていますね。
彼の主張をくみ取ると、盗撮、痴漢は未婚率が他の性犯罪者と比べて高い。また、集団強姦も未婚率は高い。
しかし、身体障碍者を見ると、同程度であることが分かります。
また、年収100~200万の層も同様です。
両者をくくって、社会弱者と見ましょう。
ここで他の視点を入れます。単独強姦、小児強姦、強制わいせつを見ましょう。すると、なんということでしょうか。社会弱者と比べて15~20%も未婚率が低いのです。
これらの性犯罪の中で、一般的には、盗撮や痴漢は強姦程の加害ではないと考えられると思います。しかし、加害の度合いがより強いと考えられるような犯罪者の方が未婚率は低い。
ここから、歪んだ結論が導かれます。
「性犯罪をするなら、加害性の高いやつをやった方が結婚しやすい!」
「身体障碍者より強姦する人の方がモテる!」
「モテてるやつは暴力的」
歪み切った結論としては、
「我々社会弱者はもういっそ強姦した方がモテるだろうし結婚できるんじゃないの?」
です。
(後で反論しますから安心してください。もう少し続きます)
迷走は続く
「男性の暴力性は異性獲得競争において適応的」というのはもはやかなり妥当性の高いファクトなのだから、この様な暴力を許さないためにどのような社会を構築するべきかとかを考えた方が建設的な気がするのよな。もう規範的な議論で誤魔化せる段階じゃない。
— 小山晃弘 (@wakari_te) September 9, 2019
「性犯罪をするようなパーソナリティが異性獲得競争において適応的か?」という問いを考える場合、単に一般の婚姻率平均と比べても意味はなくて、「無職率29%(通常の10倍)、大学進学率14%(通常の1/4)、でも性犯罪者は犯していない」みたいな母集団と比べないと意味がないのですよ。 https://t.co/O4KSJCzS6E
— 小山晃弘 (@wakari_te) September 9, 2019
少し持ち直して、そしてまた迷走する
だから自分は「性犯罪者は普通の人よりモテる」という主張はしていなくて、「無職率29%、大学進学率14%というハンデがあるにも関わらず過半数が婚姻してる。これは同じような母集団と比べたら統計的に優位に性犯罪者の方がモテるのではないか?」ということを言ってるわけです。
— 小山晃弘 (@wakari_te) September 9, 2019
ある程度分かってきたとは思うのですが、ここでもう少し混乱させる話をしてから、反論フェーズに移らせていただきます
これを読んで、「そしてそうなのかも?」と思って、「いや、それは間違っている」と往復するかもしれませんが、ここでしっかり反論をしておきます。
強姦をする奴がモテるってのは幻想だし、女性は強姦されたいと思っていない
論拠を出していきます。まずは、借金玉さんの提示してくださったものから。
お、もっと詳細なデータあるやん。 pic.twitter.com/7YjOs1eWFN
— 借金玉 (@syakkin_dama) September 10, 2019
強姦を行うような暴力性を具備した結果得られるものとしては、29歳までの婚姻率が3パーほど上がります。その後、離婚率がアホほど高くなり最終的な50~60代における有配偶者率は2割ちょいという数字に落ち着きます。暴力はモテモテだね、小山さん。
— 借金玉 (@syakkin_dama) September 10, 2019
強姦を行うような暴力性を具備した結果得られるものとしては、29歳までの婚姻率が3パーほど上がります。その後、離婚率がアホほど高くなり最終的な50~60代における有配偶者率は2割ちょいという数字に落ち着きます。暴力はモテモテだね、小山さん。
— 借金玉 (@syakkin_dama) September 10, 2019
次に、なないちご氏のツイートから、有用なデータが提示されていたので紹介します
レイプ神話についてわかりやすくまとめてる論文あったので一部抜粋私的メモ。フラバしそうな人はワードミュートお願いします。https://t.co/Onm9TpN3ik
— なないちご@やどりば (@716comm) September 10, 2019
http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/2419/1/0130_019_006.pdf
そう。レイプ神話なるものがあります。
引用します。
彼女たちは、
性暴力に対する誤解と偏見を「レイプ神話」として告発した。「レイプ神話」のリストはさまざまなバージョンがあるが、とりあえずマックウェラーがあげているものを確認しよう。
(リンク先のレポートより)
神話によれば、
(M1)男性の欲求不満がレイプの原因であり、
(M2)レイプは衝動的におこなわれる
(M3)女性の(自覚的・非自覚的)性的なアピールが原因である、女性が誘惑している、
(M4)犯行の現場では物理的な強制・暴力が使われ、被害者は重傷を負う、(M5)レイプは「見ず知らずの加害者」によっておこなわれる、
(M6)犯行は比較的短時間のうちに、
(M7)屋外でなされる、
(M8)女性はレイプされたいという隠された願望をもっており、女性の「ノー」はその願望の表明である。
しかし実際には、
(F1)レイプ犯の多くにはセックスパートナーとの性生活をもっている、
(F2)多くの加害者は多かれ少なかれあらかじめ犯行の計画を立てている、
(F3)被害者選定にあたっては、被害者の性的アピールはさほど重視されていない、(F4)被害者は恐怖などのためにほとんどなんの抵
抗もできず、それゆえ傷を負うことはそれほど多くない、
(F5)レイプの加害者は多くの場合被害者の顔見知りであり、配偶者やボーイフレンド、職場の同僚といったよく知っている人々の場合が少なくない、
(F6)犯行は実際には被害者・加害者の自宅あるいは宿泊施設等でおこなわれ、
(F7)また事前に長時間にわたる会話や説得、押し問答などがおこなわれる場合が少なくない
(F8)レイプや強引なセックスに関するエロティックな空想を好む女性は存在するもの、現実にそれがおこなわれることを欲求することはない(MacKellar 1975)。
つまり「『女性はレイプされたがってる』という命題は反駁済みの『思い込み』であり」「1975年にはそれを否定されている」という話ですね。
(氏のツイートより。つまり以下は氏のツイート。それ以前はリンク先からの引用をツイートしている)
ここで、じゃあ何故そういう動画を検索するのか?という話を私なりに解釈します。
- 女性は積極的で魅力的な男性を好む
- 魅力的な男性からのアプローチに対して、自分を安売りしないという意図で拒絶してみたい
- それでも魅力的な男性が迫ってくるということは、私は魅力があるということで、そうした魅力を持ちたい
- しかし、誰からも好かれるというのは望ましくないし、意中の男性以外から迫られることはむしろ恐怖である
ノーと言いながら、それでも自分を諦めない様な魅力を自分が持っていたら嬉しいし、そして迫ってくる男性は必ず魅力的であって欲しい
更に、市場から溢れた男性はそれなりの理由があって溢れたのであって、本気でノーと言っている時と、ポーズでノーと言っている時を見分けられるような人間であれば市場から溢れてなどいない
などという事もあるかもしれません(私の妄想も含まれると思いますけれど)
つまり、男性の視点からすると、「美女に迫られたい」「ブスに迫られるのは嫌だ」というようなことであり、決して「誰でもいいから迫られたい」というようなことではないのです
もちろんこういう話もあります
https://t.co/QNKsXwCXb7
— なないちご@やどりば (@716comm) September 10, 2019
進化心理学で2010年以降の論文Google Scholarで検索かけたら「女性は排卵日前後でマッチョで食欲のガツガツした男を好むようになるが、それはあくまで短期的な相手としてである(大意)」という論文ならありました。食欲のガツガツしたマッチョが暴力的かはわかりません。 https://t.co/VEowaymNvA
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/147470491301100122
少なくとも弱者男性の殆どは"性的に積極的で男性的(マッチョ)な人"ではないとは思いますが、それ故に性犯罪者がモテるとまでいうのは無理があります。
つまり、性的に積極的なマッチョは(一時的な性行の相手として)モテる
という傾向はあるが、あくまでワンナイトの相手であり、そしてそれは性犯罪者であったり、暴力的な人間であるとまで言うのは飛躍である。ということです。
この話は「弱者男性が飛びついてはいけない話」なのです。慎重にならないといけない。
「こういう創作作品を閲覧する人間は、こういう犯罪を求める傾向がある」
という主張を後押しすることになるからです
弱者男性がお世話になっているAVやアニメ、漫画などを全て焼き尽くされる巨大な槍を育てることになるのです。
「女性はこうだ、私はこうだからモテない。私は紳士的だからモテない。紳士的な私を好かない女性の側が悪い」
と思っていれば幸せなんだとしても、そういうものにすがってはいけないのです。
仮に、
「いじめの主犯格がクラスの中心的人物で、クラスの中心的人物だから、私をいじめているのにモテている」
「ギャングのボスは犯罪者だが、金持ちだから、マッチョだからモテている」
とか、そういう主張をしたいんだとしても、だからって、悪いことをやるからモテるんだってのは駄目です。間違ってます。モテる要素を持ちながら、悪いことをやっているだけ。
「俺も悪いことをやればモテるんだ」
は無しでお願いします。そんな論を掲げて仲間と盛り上がっても、駄目なんですよ。
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とりあえずで仕上げたんで、ここをこうした方がいいよってのがあればご意見ください。ここまでお付き合いいただきありがとうございました